2024年1月25日 発行
発行責任者 杉山雅章
目次ここまで
2月は、日本映画「きこえなかったあの日」を上映いたします。
点訳担当の浦野です。本紙で読者の声を募集した際、口座管理について取り上げてほしいという声がありましたね。それをきっかけに自分の場合を思い出してみました。今回は私の成長と口座管理の記録です。そして、コーナー枠を拡大してお届けします。
私が最初に自分管理の口座を持ったのは、中学生の時です。当時の私は実家を離れ、盲学校の寄宿舎で暮らしていました。お小遣いは郵便貯金への入金で、それを自分で引き出すのです。
「訓練担当コラム」でも取り上げられていましたが、ゆうちょには点字付きのキャッシュカードがあります。これをATMに差し込むと音声案内付きになり、残高は点字ディスプレイに表示されます。ですから、口座の残高はわかるのですが、履歴をさかのぼって見ることができません。もっとも、当時の私の口座はシンプルです。入金は実家からの仕送りのみ、出金は自分が引き出した分だけ。自動引き落としの設定もありませんので、特に不自由は感じていませんでした。
このサービス、もちろん今でも健在です。点字が読めない方は、ATM設置の受話器で残高を確認することもできます。音声ガイド付きのATM操作は、大手都市銀行やセブン銀行(後述)のATMでも可能です。
盲学校の寄宿舎を出て一人暮らしを始めると、口座の入出金が増えました。家賃は両親が負担してくれていましたが、光熱費や電話代は自分で払っていました。これらは口座から自動引き落としになっていますので、入出金履歴を確認したくなります。当時の私はさくら銀行(現・三井住友銀行)を利用していましたが、テレホンバンキングのサービスがありました。フリーダイヤルで電話し、支店番号、口座番号、キャッシュカードの暗証番号を入力します。すると、残高照会や入出金の履歴が確認できます。しかし、履歴は3件までしか確認できなかったと記憶しています。ですから、こまめに電話をかける必要がありました。
調べてみると、このサービスも健在のようです。利用者も減っているだろうと思いますが、今でも使えることを知り懐かしくなりました。
その後、インターネットバンキングを使うようになりました。その頃には家賃も自分で振り込むようになりましたから、大変便利に使っていました。入出金履歴も前月1日までさかのぼれますし、振り込みもできます。音声ガイド付きATMでは振り込みができませんので、大変有効です。なお、振り込みの際は、あらかじめ決められたパスワードの入力を求められました。
当然ながら、インターネットバンキングは今でも利用できます。ただし、振り込みの際のパスワードは廃止され、スマホのアプリに表示されるワンタイムパスワードを入力する方式になっています。スマホを持っていない方にはかえって不便になってしまいました。
とはいえ、通帳の存在をまったく無視しているわけではありません。インターネットで履歴を確認しつつも、通帳の記帳だけは定期的に行います。音声ガイド機能の付いたATMなら、単独で記帳が可能です。ただし、問題が一つあります。どのページを開いてATMに差し込むかということです。用紙の表面を触れば、印字圧からどこまで書かれているか判断することができます。しかし、これはちょっと頼りない。私は毎回しおりをはさむことにしています。
現在はスマホアプリでインターネットバンキングを利用しています。スマホアプリでは、指紋認証などで口座にログインできます。ワンタイムパスワードもアプリ内に表示されるため、入力不要になる場合もあります。気軽にいつでも口座管理ができるのは、大変便利です。スマホを使いこなせるようになったら、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
そして、通帳のないインターネット専用銀行を利用するようにもなりました。期間を指定して、入出金明細をダウンロードすることができます。ネット専用銀行ならではの特典もいろいろあり、段々とこちらがメインになりつつあります。
その特典の一つに、給与や年金を定期的に受け取ると、他行への振り込みやコンビニATM手数料が無料になるというサービスがあります。皆様はセブンイレブンのATMを利用したことはあるでしょうか。音声ガイド付きで多くの金融機関のキャッシュカードが利用できます。上記の特典を得ると、このATMが無料で使えてとても便利です。もっとも、世はキャッシュレス時代。ATMからお金を引き出す機会も減ってしまいましたが。
読者の声をきっかけに、昔を懐かしみつつ原稿を書かせていただきました。お楽しみいただけたでしょうか。また、皆様の工夫もお聞かせいただければ幸いです。
音訳・音声ガイド担当の橋口です。
布団から出るのが辛い日々が続きますね。この記事を書いているのは、休み終わりの1月22日のこと。体が休日モードで頭があまり働いていませんが、編集委員の浦野より催促を受けている身ですので、粛々と執筆を進めることにします。
さて今回の本ですが、能登半島地震が発生したこのタイミングでご紹介していいのか、正直悩みました。ただ音訳者やデイジー編集者が口をそろえて「おもしろかった!」と言うので、皆様にもぜひご紹介しつつ、私も読んでみようと思った次第です。その本がこちら!
内容をご紹介しますね。兄を事故で亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから災害救助用ドローンを製作するベンチャー企業に就職。業務で障害者支援都市「WANOKUNI」を訪れますが、そこで巨大地震に巻き込まれます。ほとんどの人間が避難したものの、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されたことが判明しました。彼女は「見えない、聞こえない、話せない」という障害を抱えながらも、街のアイドルとして活動する中川博美でした。崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。タイムリミットが迫る中、ハルオは一台のドローンを使って、中川をシェルターへ誘導するというミッションに挑みます。無音の闇を彷徨う要救助者の女性と、過去に囚われた青年。二人の暗闇に光は射すのでしょうかー。「このミステリーがすごい!2024年版」で5位に輝いた話題作です!
なお『アリアドネの声』というタイトルは、ギリシャ神話の「アリアドネの糸」がベースになっています。ミノタウロスの話ですね。転じて困難な状況を打開する意味で使用されるそうです。糸でも声でも、それがどれだけささやかなものであったとしても、必要としている誰かにつながってほしいなと、いつもそう思いながら仕事をしています。
昨年12月の号外をきっかけに、とても長いコラムを書いてしまいました。皆様の参考になれば幸いです。ほかにもご要望をいただいておりますので、少しずつにはなりますが、お応えしていきたいと思います。
今年も読者のお声に応えられるメールマガジンを目指したい。そう決意を固めつつ、204号をお届けします。
メールマガジン『アイeye』 編集委員 浦野盛光
発行:川崎市視覚障害者情報文化センター(川崎アイeyeセンター)
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メールマガジンは ここまでで終わりです。