2023年10月25日 発行
発行責任者 杉山雅章
目次ここまで
11月は、アメリカ・イギリス映画「わたしを離さないで」を上映いたします。
今野 浩美
イギリスの海に繋がる広い川沿いの港町にジョン・ドリトルという医者が大勢の動物たちと暮らしていて自身を博物学者と呼んでいた。
彼はおばあさんオームのポリネシアから鳥の言葉を学び、それをきっかけに犬とも豚とも体の両側に頭のある鹿とも馬ともオットセイとも話ができる。
もし人と動物がこんなふうにコミュニケーションできたら、を想像して、物語を作り、まるで現実の世界のように広げて語られていくお話しが、ドリトル先生シリーズの作品です。
私は50数年前、都内にある盲学校に通っていた小学2、3年生の頃、当時新任の担任になったユウジ先生から、授業で読み聞かせてもらったことを思い出しました。先生は全然先生らしくない雰囲気の20代前半、みんなで「ゆうちゃん先生」と呼んでいました。
ただ、もうかなり前の記憶なので、ドリトル先生の話ということだけ記憶していたのと、ムツゴロウ王国みたいな多種多様な動物が集まる世界をテレビ放映で見たときにドリトル先生と重ね合わせて思い出すことがあっただけでした。
ひょんなきっかけで朝日新聞に別な翻訳家によるドリトル先生の連載を見つけ、サピエでちょっと聞いてみました。
これをきっかけに、秋の読書と称して夜の夜中までシリーズをむさぼり始めてしまったのです。
お金に無頓着でせっかく動物たちと貯めた先生達の食いぶちを気前よく困っている人、困っている動物のために使い切り、すぐに一文無しになってしまう。
サーカス団の動物の扱いが悪いと、その動物を故郷に逃がしたり、帆船で航海しながらツバメや街中の雀達と協力して国際郵便局を経営したり、遠い南の島で部族の争いを収めたかと思うと、とんでもない!その島の王様に仕立てられて国を統括する身の上になってしまったりと、実に何でもありのスリル、サスペンス、アドベンチャーが展開されます。
海賊をやっつけたりオットセイを婦人に変装させ馬車で逃亡したり、囚人呼ばわりされ牢屋に入れられたり、小学低学年には想像できない大人のいやな社会風刺が効いていたり、とても楽しく描かれていて、読破したい気持ちに心が乗っ取られております。
以下のシリーズ(点字もデイジーも)が読む順番としてお勧めです。
(岩波少年文庫、ヒュー・ロフティング作 井伏鱒二訳、2000年発行の新版)
貸し出しの庄司です。皆様は、「名作」と言われる作品を読みますか?
外国作品なら『カラマーゾフの兄弟』『嵐が丘』『風と共に去りぬ』『ハムレット』『罪と罰』『戦争と平和』など。
日本の作品なら『華麗なる一族』『羅生門』『華岡青洲の妻』『人間失格』『こころ』『雪国』など。
たくさんありますね。文学史に出てくるような名作は、タイトルは知っていてもなかなか読むという機会がありません。特に、ロシア文学などは長くて長くて、もう読む体力がない、という声も聴きます。
でも、考えてください。これから続くあなたの人生で、今日が一番若い日ですよ。いつか読もうと思っていたあの名作、いつ読むの?今でしょ!ということで、今回は名作を3作品ご紹介します。
内容:八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課す。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。
内容:吃音と醜い外見に悩む若き僧・溝口にとって、金閣は世界を超脱した美そのものだった。ならばなぜ、彼は金閣寺を焼かなければならなかったのか。破滅に至る青年の「告白」として紡がれる文学。現実の金閣放火事件に材を取り、31歳の三島が自らの内面全てを託した不朽の名作。
内容:砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。ひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。読売文学賞受賞作。
名作が読み継がれているのは、そこに深淵なる真理が書かれているからだと思います。
皆様のご希望をお待ちしております。
点訳担当の浦野です。今年もあっという間に年末が近づいてしまいましたね。
年末といえば、センター恒例の落語会です。今年は4年ぶりに復活するセンターまつりの企画として実施します。今回、私の夢がかなって隅田川馬石師匠に出演いただけることになりました。馬石師匠は、人間国宝・五街道雲助師匠のお弟子さんで、2007年に真打昇進されました。
私が馬石師匠にはまったのは、4年前の9月です。たまたま行った落語会で馬石師匠の「お富与三郎」を聴いたのです。ものすごい熱演で、噺の世界にぐいぐい引き込まれてしまいました。「お富与三郎」は長編で、そのときは5日連続公演。私が行ったのは初日でした。あまりにもよかったので、最終日の公演にも行きました。
最終日、興奮冷めやらぬまま会場を出た私に、「一緒に駅まで帰りましょうか」と声をかけてくださった方がいました。駅まで歩く間に話したのですが、その方は馬石師匠の大ファンで、すっかり意気投合しました。その後も馬石師匠のおすすめ公演を教えてもらい、ご一緒したこともあります。今でも馬石師匠の会で、ばったり顔を合わせたりします。馬石師匠のおかげで、落語仲間が増え、世界が広がったのでした。
センターでの公演は時間も限られており、「お富与三郎」のような長編は難しいですね。しかし、聴く人を引き込む馬石師匠の話芸を存分にお楽しみいただけると思います。皆様の来場をお待ちしております。
前号からセンターまつりの情報を少しずつ紹介しております。次号では、オブリガード企画について取り上げます。どうぞ、お楽しみに。
メールマガジン『アイeye』 編集委員 浦野盛光
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