2016年9月25日(日曜日)発行
発行責任者 小野俊己
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横浜みなとみらいにある大型ショッピングモール、ワールドポーターズで横浜バリアフリーフェアが開かれます。今年の企画はワールドポーターズ内の映画館イオンシネマみなとみらいで上映中の映画、「四月は君の嘘」をライブ音声ガイドで楽しもうというものです。視覚障害者の方だけでなくさまざまな方に音声ガイドを楽しんでいただき、「映画を聞く」楽しみを知っていただきたいということです。
みなさんこんにちは。今年の3月まで、点字図書の製作を担当していた佐藤です。センターがオープンした2014年から、2年という短い間でしたが、点訳ボランティア、利用者、一緒に働いたセンターの仲間、そのほか本当にたくさんの方にお世話になりました。いろいろ不十分なことも多かったと思いますが、新しくなったセンターで、点字のことで、何か少しでも皆さんに喜んでいただけることができたとしたら、とてもうれしいです。本当にどうもありがとうございました。
やっと慣れてきたセンターを離れ、お世話になった皆さんとお別れするのは寂しかったのですが、異動ということになりました。今私は、東京・高田馬場にある日本点字図書館で働いています。仕事の内容は一言では言い切れませんが、一番多いのは、電車の駅で視覚障害者が利用する点字サイン関係のものです。点字サインという言葉を初めて聞く方も多いと思いますが、ここでのサインは、自分の名前を紙に書くサインではなく、合図とか看板という意味のサインです。
具体的に言うと、触ってわかる構内案内図やトイレ案内図、階段のてすり・エレベーターのボタン・ホームドアなどにつける点字シート、切符を買うときに利用する点字運賃表などです。皆さんはどれくらいご存知でしたか?ぜひ、身近な駅の点字サインを見つけて、目ではなく指で確かめてみてください。
点字サインは、点字が読める視覚障害者が慣れないところに一人で行く時にはとても大事な存在です。たとえば、階段を上がった先が何番線のホームなのか、そこにはどっち方面の電車が来るのかが、階段の手前で、てすりの点字を読めばわかるわけです。ただ、サインには場所や大きさの制約があるので、晴眼者用のサインと同じ情報をそのまま盛り込むことはできません。ですから、点字サインの仕事をするときは、何を書いて何を捨てるか、どうやって図に表すかを常に考える必要があります。本の点訳・校正とは一味違う難しさとおもしろさがある現場です。
そんな中で、私は全盲の当事者の立場で、一つひとつの点字や図を触って確かめる仕事をしています。点字の書き方が規則通りにできているかはもちろんですが、点字サインならではの大切なチェックポイントがいくつもあります。たとえば、視覚障害者が一人で触って意味がわかる図になっているか?細かすぎたり窮屈な部分はないか?大切な情報が抜けていないか?指先で感じる点や線の高さ、手触りは問題ないか?などなど。見えない人に安心して使っていただける物ができるように、目の見えるスタッフと協力しながら毎日がんばっています。
点字の本も、点字サインも、どちらもとても大切なもの。センターで作られた本は日本中の人が借りているし、全国にある点字サインを川崎の方が触ることもあると思います。これからも、点字を通じて、みなさんとつながっていたいと思います。
9月の新製品がいろいろと登場しました。オススメは「まな板」です。ちょっと変わった形のまな板、アイeyeセンターで手にとってご覧ください。
色は白。まな板の左側面、奥側、右側面に2㎝のフチがあり、切った食材や汁をこぼさず調理できます。まな板は傾斜して手前が高く、奥に行くにつれて低くなっています。フチの深さは約1.5㎝あり、奥に食材の汁が溜まります。左側の手前にフチがないスペースがあり、きゅうりや長ネギ、にんじんなど、長い食材も切りやすくなっています。
販売価格 1295円 (税込) ※色は白です。
音声ガイド付きの映画をご覧になった方は多いことでしょう。アイeyeセンターでの体験上映では、スピーカーから場面の解説が流れてくるのを聞いて映画を楽しむ方式です。目の不自由な人もそうでない人も解説を一緒に聞くことができるのは、手軽ではあるけれど「ガイドは要らない」という方には向いていません。一方、映画館などで行われているラジオを使って解説を聞く方法なら他のお客様と一緒に見ながら、自分だけガイドを聞くことができます。ただ、この方式ですと上映のたびにガイド音声を放送しなければいけないので、上映回数や劇場が限られてしまい、自分が都合のいいときに気軽に見に行くということができません。
ここに新しい第3の方式が登場しました。決め手は「スマホ」です。スマホにUDCASTという無料のアプリを組み込んでおき、映画を見る前に専用ページから映画の音声ガイドをダウンロードしておきます。あとは劇場でスマホのアプリからガイドを再生し、イヤホンで聞くだけ。スマホというと難しそうと思う方もいらっしゃるとと思いますが、iPhoneのように視覚障害者に対応したものが普及している中で、機能を生かした方法といえるでしょう。また、一部のiPadやiPodにも対応しているので、販売店でご相談ください。
この方式、映画の音声に隠された「人の耳に聞こえない音声情報」を利用しているところに秘密があります。アプリがスマホのマイクを使って劇場内に流れている映画の音声に隠された信号を読み取り、タイミングをあわせてダウンロードしてあるガイドを再生するという仕掛けです。あらかじめ音声信号が映画の音声自体に隠されているので、どの映画館、上映時間に行ってもガイドが聞けるということ。さらに、DVDやテレビ放送のときにも同じ音声を使っていればガイドが聞けるという画期的な方法なのです。
すでに、この夏休みに公開されたアニメ「ワン・ピース」やSFサスペンス映画「秘密」にこの方式で音声ガイドがついて上映され、多くの視覚障害者の方が劇場で楽しんでいらっしゃいます。また、映画だけではなく、美術館や水族館での利用も始まりました。音声だけではなく画面に字幕も出せることから4年後の東京オリンピック&パラリンピックでは、会場での解説放送や字幕放送、複数の言語に翻訳した文字情報をへの利用も計画されています。新しい技術が情報バリアフリーを加速することになるのでしょうか。
UDCASTを体験してみたい方はアイeyeセンター、鳥居まで。
1960年代、「ザ・ビートルズ」以前に、世界中で大ヒットの記録を打ち立てた4人組のコーラスグループ、フォー・シーズンズ。日点秋のチャリティ映画会は、彼らの栄光と挫折の物語を「シェリー」「君の瞳に恋してる」などの名曲と共に描く「ジャージー・ボーイズ」です。春夏秋冬の四季になぞらえた構成で描くブロードウェイ・ミュージカルを、クリント・イーストウッドが見事に映画化した傑作です。懐かしい名曲と共にお楽しみください。
先日の日本キルギス友好チャリティコンサートには160名の方がお越しになり、すばらしい歌声を満喫されました。文学、音楽、映画、芸術は国境も障害も越えて私たちの心をつなぐ魅力があるとつくづく思います。
メールマガジン「アイeye」編集長 鳥居秀和
発行:川崎市視覚障害者情報文化センター(アイeyeセンター)
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